大正時代に建てられた鉄筋コンクリート造の蔵を外部内部とも改修。
あわせて、道路からのアプローチ、隣接する木造の蔵の外部改修、母屋につながる渡り廊下を改修。
蔵の外部は改修前は白一色でしたが、木造の蔵の外観にあわせて、焼杉板による腰板を設け、ハチマキ部分は黒漆喰で仕上げました。屋根は既存の葺き土をおろし、石持万十凌ぎ棧の淡路瓦で葺きなおしました。開口部は既存の扉を漆喰で補修しています。
蔵内部の壁は、凸凹の表情のある淡い黄緑の磨き壁で仕上げ、桟木でアクセントをつけています。エントランスの床には、淡路・達磨窯の敷瓦を用いて、空間を引き締めています。
2階へ上がる階段は、少し洋風のモチーフを取り入れ、質感のある鉄と木でつくっています。
搔き落としで仕上げた踊り場を経て、ゆるやかに湾曲した形状で上下するようにし、空間に柔らかさを演出しています。
2階には、四季の花をモチーフにしたステンドグラスが計8個、丸窓の中に収められており、それぞれの形状に見合った、全て異なった技法を用いて作成されています。
母屋につながる渡り廊下には、曲面の搔き落としの壁と錆丸太で囲まれたトイレを設け、空間にアクセントをつけています。廊下の突き当たりには、あえて高さを抑えた窓を設けて、中庭を臨むように濡れ縁を設けました。
裏側から板が嵌められ外部からしか見ることができなかった既存の装飾窓の内側に、新たにガラスと障子を設け、廊下の窓として再生しました。この廊下は大変表情の細かな土壁で仕上げています。
100年を経た建物を次の100年へ引き継ぐために、今の時代の素晴らしい技術によって生み出された素材を組み合わせて一つの空間にしました。
敷瓦:山田 脩二
左官:久住 章、久住 誠、久住左官の皆さん
ステンドグラス:友定 聖雄