某寺院の庫裏        (東海地方)    2017/12 竣工


居間1居間2居間3居間4キッチン1キッチン2テーブルテーブル2テーブル3風呂1風呂2風呂3洗面所壁棚縁側外観

この住宅は、東海地方にある歴史あるお寺の会館を庫裏に改修したものです。

お寺の将来像を考え、必要に迫られて増築を繰り返してきた寺院全体の配置計画を見直すなかから、大きな広間が二間あった会館部分を庫裏に改修しました。

屋根、外壁等はあまり痛んでおらず、最低必要な程度の修繕にとどめましたが、南側の軒が短かったため、この部分に低い下屋を設けて、落ち着いた雰囲気と空からの光を遮り庭の明るさを感じる空間にしました。

内部は、土壁や黒谷和紙を仕上に用いて、この歴史あるお寺の風格にふさわしい上品な空間に仕上げました。色と材料を吟味することで場所ごとに違った雰囲気をつくりながらも、全体としてまとまりを感じさせる仕上がりになりました。

東西に長い居間は、天井を張らずに吹抜とすることで既存の小屋梁がみえるのびのびとした空間になっています。屋根までとどく大きな壁は、橙の土壁とその上部を大らかな曲線を描きながら引き締める黒い和紙によって構成され、和紙壁の下端の曲線部を銀色に着色することで、印象が重くならないようにしています。間接照明等の照明の工夫と相まって、上品な空間を演出しています。大小二つのテーブルも、凹凸のある特殊な漆喰磨きで仕上げた天板と鉄の作家による軽快な脚部を組み合わせた、他にないものになっています。素材から感じる重さとデザインによる軽やかさを混在させることで、不思議な質感のテーブルになりました。

また浴室も、浴槽から壁まで左官工事で仕上げ、庭を眺めながらゆったり入っていただける空間となりました。湯をはると浴槽の黒さが増すとともに、そのこちりばめられた白や赤の骨材がより輝きを増します。脱衣スペースとは、丸太とそれに軽やかなデザインで絡まる左官仕上の壁でゆるやかに区切られており、これも不思議な重力感を感じさせます。

歴史あるお寺に今の時代の優れた技術を用いて新たに手を加えることで、これらの技術を長く次の時代に伝えていって欲しいと思います。


左 官 :久住 章、平山 真也

黒谷和紙:ハタノ ワタル

鍛 鉄 :佐々谷 良

© KenNagao & Associates Architectural Design Studio 2014